群馬県立産業技術センター

Gunma Industrial Technology Center

令和5年度 研究報告

試験分析高度化研究

キャリアガスにアルゴンを用いた有機元素分析に関する検討

Attempt to organic elemental analysis using argon as carrier gas

綿貫陽介・恩田紘樹・瀬賀悟史

[概要]
 本研究では有機元素分析装置に用いるキャリアガスにアルゴンを用いて標準物質としてスルファニルアミドの測定を行い、元素ごとに検量線を作成した。その結果、有機元素分析においてキャリアガスにヘリウムを使用した場合と比較して、検出感度は、窒素、炭素、水素および硫黄でそれぞれ0.15倍、0.17倍、1.1倍および0.35倍に、また、定量下限値はそれぞれ1.6倍、3.1倍、1.2倍および1.2倍となった。これらの結果から微量分析であれば試料量を変えることなく分析可能と考えられた。
[キーワード]
 有機元素分析、キャリアガス、ヘリウム、アルゴン、スルファニルアミド

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試験分析高度化研究

超ハイテン材プレス解析用パラメータ取得と解析ソフトへの適用

Acquisition of press analysis parameters for ultra-high-tensile strength materials and their application to analysis software

荻野直彦・増田直也・新井宏章

[概要]
 自動車構造用部品では,カーボンニュートラルへの対応で軽量化が求められる中で,非常に厳しい燃費改善と衝突安全性の保障が要求されており,構造材の厚さを薄くしても強度を確保できる高張力鋼板(ハイテン材 )の使用が主流となる。近年では,引張強さ1GPa以上の超ハイテン材の使用も拡大している.超ハイテン材のプレス成形には,複雑な形状プレス成形時に発生するしわや割れ,成形後に発生するスプリングバックなどの寸法誤差などの欠陥が発生しやすく,CAE解析の必要性がますます高くなる。超ハイテン材のCAE解析には,材料パラメータの取得が求められるが、特殊な試験方法が必要となるため、高度な材料試験技術が必要となる。本研究では、プレス成形解析用の超ハイテン材の材料パラメータの取得し,プレス成形解析,実機成形を実施したので,その結果について報告する。
[キーワード]
 高張力鋼板,プレス成形解析,材料パラメータ

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試験分析高度化研究

樹脂/ゴム製品の熱劣化解析のためのFT-IRスペクトルライブラリの構築

Building of FT-IR spectral library for thermal degradation analysis of resin/rubber products WATANABE Motohiro, IWASAWA Tomoyuki, NAKASONE Yuichi

渡辺元浩・岩沢知幸・中曽根佑一

[概要]
 樹脂/ゴム製品の異物、異常調査に関する依頼分析の高度化、サービスの向上を目的として、複数の加熱した樹脂/ゴムの赤外スペクトルを測定し、ライブラリを作成した。これらの加熱した樹脂/ゴムは加熱前の状態と比較して、赤外スペクトルのピーク変化が確認された。これらのピーク変化は、酸化や主鎖の切断、官能基の構造の変化が発生していることが示唆された。
[キーワード]
 FT-IR、樹脂、ゴム、高分子、熱劣化

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試験分析高度化研究

製品加工に対する異常検知システムの実装

Implementation of anomaly detection system for product processing

高橋慶行 ・青栁大志・小和瀬登・狩野幹大・新井宏章

[概要]
 製品加工における不良率低減および生産性向上を図るため、生産時の加工異常を検知するシステム構築を行った。さまざまな不具合要因を解決するため、プロトタイプのデジタル機器を使用したオリジナルの異常検知システムを、企業が保有する量産設備を用いて実装した。
[キーワード]
 異常検知, データ収集, 可視化, 通知, プロトタイプ, IoT

詳細(PDF 546KB)

試験分析高度化研究

異物分析システムの開発

Development of contaminant analysis system

田島創・町田晃平・永田昌弘

[概要]
 本研究では、対象物の画像を入力として、人工知能(AI)で作製した学習モデルによりこの対象物の種類を推定して出力する異物分析システムを開発した。この学習モデルは、機器分析などにより種類を特定した科学的根拠に基づいた対象物のみ利用し、複数の対象物の画像を機械学習して作製した。この異物分析システムは、スマートフォンにダウンロードできるアプリケーションから成るため、産業分野において利用しやすいと考えられた。
[キーワード]
 異物分析、機械学習、人工知能、スマートフォンアプリ

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試験分析高度化研究

金属積層造形技術を活用した管巻機の長寿命化にかかる研究

Research on prolonging the lifespan of warping machines utilizing metal additive manufacturing technology

小林興尚・齋藤宏・齋藤裕文・三ツ木寛尚・狩野幹大・小宅智史

[概要]
 伝統織物製造に関連する機器の一部では、メーカーの撤退が原因で、消耗品や交換部品の入手、機器修理が困難な現状があり、シャトル織機での織物生産は必須となる管巻機も修理や更新が困難な状況にある。本研究では、管巻機を運用し続けるために部品を再生することを目指し、レーザースキャナを用いて管巻機の周囲環境や外観形状を記録するとともに、産業用X線CTと金属積層造形技術を活用して補修部品の再生に取り組んだ。
[キーワード]
管巻機、シャトル織機、レーザースキャナ、X線CT、金属積層造形技術

詳細(PDF 2MB)

試験分析高度化研究

ノギス、マイクロメータの出張校正手段の確立

Establishment of on-site calibration ways for calipers and micrometers

小宅智史・増田直也・中村哲也

[概要]
出張による校正作業は温度変化を伴っており現在、校正作業時の不確かさは明確でない。本研究では、そのような状況下の校正作業の不確かさを明確にすることで、出張校正手段を確立することを目的とする。恒温恒湿器を用いた実験で、校正作業の不確かさの算出に必要な熱的効果の標準不確かさを求めた。その結果、特定の温度条件下では、熱的効果の標準不確かさがノギス校正時には約2.6μm、マイクロメータ校正時では約0.83μmであることが分かった。そして、マイクロメータに関しては校正作業時の不確かさが3.4μmと求まり出張校正手段を確立することができた。
[キーワード]
出張校正、不確かさ、ノギス、マイクロメータ

詳細(PDF 1MB)

試験分析高度化研究

熱応力解析技術の高度化に関する基礎検討

Basic Study on The Advancement of Thermal Stress Analysis Technology

林和・三ツ木寛尚・青栁大志・岩沢知幸・狩野幹大

[概要]
群馬産業技術センターでは熱応力に関する解析と実際の挙動の比較検討を詳細に行った事例が少なく、解析結果の精度の把握が不十分である。そこで熱応力解析において解析精度の定量的な把握を目的とし、熱応力測定とそれに対する熱応力解析を実施した。その結果、熱応力に関する問題において傾向予測ができるようになったことで机上での様々な設計検討を行えるようになった
[キーワード]
熱応力、CAE、ひずみゲージ

詳細(PDF 736KB)

次世代産業創出研究

ドローンを活用した工場内巡視点検業務の省力化に関する研究

Research on labor saving for factory patrol inspection work using drone

町田晃平・三ツ木寛尚・小和瀬登・小林興尚・荻野直彦・石黒聡

[概要]
工場での巡視点検業務の省力化を目的として、ドローンを活用した巡視点検を提案する。本研究では、ドローンを活用した巡視点検デモの構築と現場での実証実験を行った。巡視点検デモでは、キーフレーム機能を用いた自動巡回のデモを構築するとともに、付加価値として、事前学習不要のAI画像解析と点検結果確認Webアプリを構築した。実証実験では、3か所のフィールドにて実験を行い、非GPS環境でも安定飛行が可能なことや、ドローンで撮像したデータから点検を代替できる可能性があることを確認した。
[キーワード]
ドローン、画像解析、クラウド

詳細(PDF 619KB)

その他研究

微生物資源のデータベース化

Construction of bio-resource database

渡部貴志・田島 創・吉野 功

[概要]
群馬産業技術センターが保有する産業微生物について、微生物情報のデータベース化を行い、保存方法を決定した。約600株の保存株のうち職員間で重複するものなどを整理し、約300株に集約した。また、新たに県内企業からの寄託株や、共同研究等で開発された株などの約400株を保存し、令和5年3月末で合計726株(うち、清酒酵母が623株)を保存した。清酒酵母については、増殖性、醸造特性、高泡形成能、キラー活性なども評価した。
[キーワード]
微生物資源、データベース化、清酒酵母

詳細(PDF 326KB)

その他研究

群馬KAZE酵母3号の尿素非生産性化と高品質清酒の製造

Breeding of non-urea producing Gunma KAZE3 yeasts to produce high-quality sake

渡部貴志・佐藤勝也・今井健夫・大野 豊・田島 創・石田一成

[概要]
群馬KAZE酵母は、吟醸酒用酵母として開発され、群馬県内の多くの酒造会社に利用されている。清酒中の尿素は、カルバミン酸エチルの前駆物質であり、この物質は国際ガン研究機関(IARC)によりおそらく発がん性があるとされるグループ2Aに指定されている。我々は、イオンビーム照射により、群馬KAZE酵母3号(KAZE3)の尿素非生産性化に取り組んだ。選抜方法を修正することにより、17株の尿素非生産性候補株を取得した。本研究では、実用化に向けたKAZE3の尿素非生産性株の選抜を試みた。
[キーワード]
清酒、尿素非生産性酵母、カルバミン酸エチル、イオンビーム

詳細(PDF 260KB)