群馬県立産業技術センター

Gunma Industrial Technology Center

令和4年度 研究報告

試験分析高度化研究

キャリアガスに窒素を用いたGC/MS分析による微量成分定量方法の検討

The preliminary attempt to quantifying trace components by GC/MS analysis using nitrogen as carrier gas

瀬賀悟史・恩田紘樹・川上亮英

[概要]
 群馬県立群馬産業技術センターに設置のガスクロマトグラフ質量分析装置(以下、GC/MS)において、微量成分定量分析における代表的な物質であるジェオスミン(以下、Geosmin)と2-メチルイソボルネオール(以下、2-MIB)を例にとり、キャリアガスに窒素を用いて定量分析を試みた。その結果、固相マイクロ抽出(以下、SPME)-GC/MSでヘッドスペース(以下、HS)-GC/MSよりも多くの成分をGC/MSに導入できた。さらにSPME-GC/MSによるGeosmin及び2-MIBの検出限界値は共に11 pptであったことから、110 ppt以上のGeosmin及び2-MIBであれば定量分析できることが示唆された。以上のことから、他の揮発性有機化合物についても同様の条件で定量分析できると推測された。
[キーワード]
 ガスクロマトグラフ質量分析、キャリアガス、窒素、ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール

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試験分析高度化研究

味覚センサーを活用した「群馬の酒」を連想させる味の言語化

Investigation of tasting image of “Gunma’s liquor” using a taste sensing system

渡部貴志・山田徹郎・栁澤昌臣・櫛田麻希・石田一成

[概要]
 本研究では、群馬の酒の味の特徴を評価するデータを蓄積するため、日本酒とビール・発泡酒の官能評価と成分分析、味覚センサーの分析を行った。日本酒は、純米酒系を対象に群馬県内酒は20点、県外酒は32点を集めた。群馬県内の日本酒は、辛口で香りが控えめ、苦味雑味が特徴であることが分かった。ビール、発泡酒では群馬県内酒は12点、県外酒は4点を集めた。ビール、発泡酒は、酸味、苦味雑味、渋味刺激、塩味、苦味、渋味で分析値の差があり、特徴となっていることが分かった。
[キーワード]
 群馬の酒、味覚センサー、分析

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試験分析高度化研究

プロトタイピングIoT環境の構築

Development of IoT prototype for small and medium-sized companies

青栁大志 ・高橋慶行・小和瀬登

[概要]
 主に製造プロセスを対象として、中小企業がデジタル技術を円滑に導入するためのプロトタイピング環境を構築した。本格的に導入する前にこの環境を活用することによって、導入に必要な知識やスキルを身に付けるだけでなく、運用と検証を通じて現場の生産性を真に改善する仕様を見出すことが期待できる。
[キーワード]
 プロトタイプ, IoT, デジタル技術, 生産性, センサ, エッジ, クラウド

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試験分析高度化研究

製造プロセスにおける予知保全 時系列データの異常検知技術の構築

Predictive maintenance in the manufacturing process Construction of anomaly detection technology for time-series data

新井宏章・青栁大志・狩野幹大

[概要]
 製造設備の予知保全を行うため、正常状態のデータから異常検知を行う技術を構築した。製造現場では様々なデータや不良の発生が考えられるため、代表的なデータに対して様々な異常検知モデルを適用した。その結果、データの性質に応じて適切なモデルを選択する必要があることが分かった。
[キーワード]
 予知保全、異常検知、k近傍法、自己回帰モデル、特異スペクトル変換、ホテリングT2、混合ガウス分布、サポートベクターマシン、オートエンコーダ

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試験分析高度化研究

群馬県産ぶどう果実より単離した酵母の発酵食品への利用

Experimental production of fermentation foods brewed by Gunma grape yeasts

渡部貴志・栁澤昌臣・大和あゆみ

[概要]
 新たな産業用微生物を取得し、発酵食品へ利用することを目的とし、群馬県産ぶどう果実から120株の酵母を単離した。単離した酵母から22株の炭素源の資化性を評価したところ、様々な酵母がいることが分かり、病原性を持つものは無かった。さらにD1/D2領域とITS領域の塩基配列を利用した遺伝子解析により酵母を同定したところ、ワイン酵母Torulaspora delbrueckii OGY15-3、OGY15-4、OGY15-5が得られた。これらの3株はマルトース資化性が無いため、ビール醸造は行えなかった。一方、パン製造では市販のパン酵母と同等に膨らみ、有用性が確認された。
[キーワード]
 ぶどう、酵母、遺伝子解析、発酵食品

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試験分析高度化研究

高温地域における杜仲栽培並びに杜仲葉含有新規食材の開発

Eucommia ulmoides cultivation in high-temperature regions and development of new ingredients containing Eucommia ulmoides leaves

田島 創・瀬賀悟史・山田徹郎・吉野 功

[概要]
 杜仲は、杜仲目杜仲科を構成する唯一の植物であり、樹高が20 mに達する落葉樹である。杜仲の樹皮は漢方薬として、その葉はゲニポシド酸やクロロゲン酸などの有用成分を含む食品として用いられる。近年の温暖化傾向に伴い、群馬県の南東部は、2022年6月に気温40 ℃を連日観測するなど日本国内でも気温の高い地域の一つである。このような高温下でも杜仲を栽培ができ、有効成分の含有が認められれば、食材として利用できる。本研究では、群馬県南東部で杜仲を栽培し、その有効成分の含有量について測定、更に杜仲葉を含有するこんにゃくを新規食材として開発した。
[キーワード]
 杜仲、こんにゃく、ゲニポシド酸、クロロゲン酸、ポリイソプレン化合物

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試験分析高度化研究

はんだ付部分における評価手法の確立

Establishment of Evaluation Methods for Soldered Parts

林和・矢澤歩・青栁大志

[概要]
 はんだ付部分の加速試験は1~3ヶ月という長期間を要する。それゆえシミュレーションを用いて破損個所を事前に予測することで開発工数を大幅に削減可能である。そこで、はんだ付部分の実験的評価手法および有限要素法によるシミュレーション手法を構築することを最終目標とする。本報ではシミュレーションを行うための物性値取得方法の確立および適切なクリープモデルの選定について検討した結果を報告する。
[キーワード]
 シミュレーション、FEM、ノートン則、クリープ試験、鉛フリーはんだ

詳細(PDF 774KB)

試験分析高度化研究

管巻機の長寿命化及び再生にかかる検証

Verification of extending the mechanical lifespan of bobbin winder and investigation of necessary measures for regeneration.

小林興尚・中村 哲也・小宅 智史・齋藤 宏・齋藤裕文

[概要]
 伝統織物製造にかかる機器の一部では、メーカーが撤退していることが原因で、消耗部品・交換部品の入手や機器修繕が困難な現状がある。本研究の対象とする管巻機も修繕や更新の目途は立たないが、シャトル織機での織物生産のためには必須の機械であり、運用停止した場合、織機のシャトルにヨコ糸を設置することができなくなり、連鎖的にシャトル織機も運用停止してしまう。このことから、本研究では管巻機を運用し続けるために長寿命化または再生を行うことを最終目的とし、三次元CAD、三次元測定機、X線CT等を活用して、手段の検討を実施した。
[キーワード]
 管巻機、シャトル織機、三次元CAD、三次元測定機、X線CT

詳細(PDF 527KB)

試験分析高度化研究

味覚センサーを利用した「旨味」の「みえる化」

"Visualization" of "Umami" Using Taste Sensing System

山田徹郎・大和あゆみ・川上亮英

[概要]
 味覚センサーを用いて、サンプルを測定すると同時に、既存のグルタミン酸溶液を測定するこことで検量線を求めた。サンプルの測定値から、それに対応するグルタミン酸の濃度を求め、「旨味相当量」として表わす測定方法を確立した。また、うまみの相乗効果について味覚センサーで測定し、官能評価によらず、混合系での相乗効果が高い配合比を求める方法を検討した。昆布と鰹節を配合し、9段階のサンプルを作成した。旨味の相乗効果が特に高くなったのは、鰹節の配合比が50%から70%の間であった。
[キーワード]
 味覚センサー、旨味、旨味の相乗効果

詳細(PDF 606KB)

試験分析高度化研究

ローコード開発による簡易遠隔監視装置の構築

Construction of a simple remote monitoring device by Low-code development

石黒聡・遠藤庸弘・小和瀬登・町田晃平・黒岩広樹・水沼一英・齋藤裕文・清水弘幸

[概要]
繊維工業試験場に設置されている試験機で、試験機の状態を何度も確認している作業を減らすためにローコード開発ツール「Node-RED」を利用して、簡易遠隔監視装置を構築した。
整経機または人工気象室に停止を検知するセンサーを取り付けて、停止を検知したときに簡易遠隔監視装置からSlackに通知をすることで、試験機を直接見に行かなくても停止していることがわかるようになり、試験機の状態を確認する時間が削減され、試験機の稼働率を向上することができた。
[キーワード]
 ローコード、遠隔監視装置

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次世代産業創出研究

製造業におけるメタバース活用の基礎検討

Basic Study of Metaverse Utilization in the Manufacturing Industry

三ツ木寛尚・町田晃平・小和瀬登・小島孔明・荻野直彦・鏑木哲志

[概要]
本研究では、製造業におけるメタバースの活用に向け、工場見学及び産業用ロボットトレーニングをテーマとしたメタバース上の実証実験を実施した。さらに、メタバース空間構築に向けた基礎検討を実施するため、Unityを用いた空間構築検討を実施した。本検討により、3Dモデルデータと点群データをVRデバイスで表示可能なアプリケーションの作成を行うことができた。
[キーワード]
 メタバース、VR、Unity

詳細(PDF 683KB)

その他の研究

発酵力の強い群馬G1酵母の泡無し化と高品質清酒の製造

Breeding of non-foaming Gunma G1 yeasts to produce high-quality sake

渡部貴志・近藤雄一郎・吉野 功

[概要]
群馬G1酵母(G1)は、発酵力が強く普通酒や本醸造酒向けの群馬県独自の酵母である。しかしながら、G1はもろみ発酵中の炭酸ガスの泡に吸着し、高泡を形成する性質をもつ泡有り酵母であり、酒造りの際に泡消しの作業が必要であった。このため、今から約30年前にはG1の頒布を中止していた。一方、近年の地酒ブームに伴い、独自性が示しやすい群馬県独自の発酵力の高い酵母の開発が酒造業界から求められてきた。そこで本研究では、G1から優れた醸造特性を維持した泡無し株を取得し、実用化を行ったので報告する。
[キーワード]
 清酒、群馬清酒酵母、発酵、泡無し株

詳細(PDF 572KB)

その他の研究

群馬KAZE酵母のカナバニン感受性が抑えられている原因調査

Study on the mechanism to repress the canavanine sensitivity of Gunma KAZE yeast

渡部貴志・佐藤勝也・大野 豊・田島 創

[概要]
清酒中のカルバミン酸エチルは、発がん性が疑われているため、その前駆物質である尿素を生産しない酵母の育種が進められている。尿素非生産性酵母は、カナバニン耐性を指標に選抜されるが、群馬KAZE酵母はカナバニン感受性が抑制されている。そこで本研究では、群馬KAZE酵母のアルギニン代謝遺伝子とアルギニン取り込み、硫黄代謝関連遺伝子について解析した。また、セルレニン耐性株が多剤耐性にならないようにグリセロールを炭素源に用いられることに着目し、群馬KAZE酵母3号に適したCAO培地を作成した。
[キーワード]
 清酒、カナバニン、尿素非生産性酵母、アルギニン

詳細(PDF 407KB)